お菓子作りから広がること。福祉作業所「ぴいす」さんのお菓子作り

ぴいすティック,フォトグラファー,赤石

焼き菓子「ぴいすティック」ができるまで前編後編。焼き菓子ができるまでにはたくさんの作業があります。

この焼き菓子を作っているNPO法人 調布心身障害児・者親の会の福祉作業所「ぴいす」さんでは、お菓子作りはもちろん、お菓子の袋詰めから、材料表示のシール貼りなどパッケージするまで一つ一つが手作業。ここまで手作業なのには理由があるのです。
調布市福祉作業所,ぴいす,「ぴいすティック」

<お菓子作りに関わる人たち>

野川さん:焼き菓子「ぴいすティック」はいつ誕生したのですか

 3箇所の(福祉)事業所が一緒になった際、そのうちの2箇所の事業所が以前からケーキを焼いていました。集まった事業所の名前を何にしようかと色々と考え「ぴいす」と決まり、(新しくなる事業所では)ケーキを作るか作らないかとなった際に、せっかくメンバーさん(ここで働くみなさん)もケーキ作りに慣れていることだしやっていこうとなりました。

 以前の事業所では大きなケーキしか作っていなかったんです。その大きなケーキを切って板状としても販売していました。切って使うと丸いケーキのはじっこが使えない、残ってしまう。もったいないねということで、スティック状のものがあることを知り、最初からスティック状に作れば食べきりサイズにもなるし破棄するところもないね、ということでスティック状のものを作ることに決まりました。

(この日は、岡本さん(写真上)村上さんが(写真下)、メンバーさんの作業を見守っていました)
 
 名前については、ぴいすに由来したものにしていきましょうということで、「ぴいす」の「スティック」だから、「ぴいすティック」に。今の場所に移動する前から試作を始め、2011年4月1日から販売しました。

野川さん:ぴいすティックはどこで購入できますか。

 総合福祉センター、市役所、ちょうふだぞうさん、森のこみちさん、その他には販売会や福祉まつりなど地域のお祭りでですね。販売当初は作業所と連絡会を通じて販売できる場所を確保していました、そこから徐々に販売場所を広げてきています。ここ(ぴいす)でも販売をしているので、ぴいすティックなどできた際に看板をかけると、今日は焼いたのね、とお声をかけていただくこともあります。

野川さん,ぴいすティック,福祉作業所,調布

野川さん:ぴいすティックの味は、最初から何種類もあったのですか?

 当初は3種類 プレーン、チョコアーモンド、ごまっちゃで、カフェモカ、紅茶は後からです。

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野川さん:くるみを砕いてローストすることから、パッケージのシール貼りなど、時間のかかる手間ひまを既製品の材料でもっと簡単にできるのではないかなと感じたのですが。

 「美味しいお菓子を作る」というのは大前提ですが、せっかくお菓子を作るのだからメンバーさん全員に関わってもらいたいと思うのです。関わることで、何ができる、何ができないを自分で意識できるようになり、「この作業は難しい」を自分から言えるようになってもらいたい。

 メンバーさんに関わってもらうためには、お菓子作りの作業を細かく、料理のレシピも細分化して区切ることが大切です。くるみを砕くのが好きな子、チョコを刻むしかまだできない子もいます、お菓子作りは難しくても、洗い物をすることでみんなと一緒に作ったという実感にもつながる。本人にとってまだ難しい作業も、ここまではできるよ、と状況を判断して出来ることを広げていくことも職員の仕事。ここはできるけど、ここはできない、など各々のメンバーさんができることを把握して、また、昨日できた、今日はできなかったという状況をみながら、メンバーさんにどのように関わってもらうか判断をしています。

メンバーさんがやっていると、お菓子作りを自分もやってみたいと興味を持って、そのためにはどういうことが必要か、きちんと手を洗おうなど意識が芽生える。
また、出来上がりが目に見えるので、私が作った、だから買ってほしい。自分が作ったものを手にとって美味しいといってくれる。お菓子作りがやりがいになる。もちろん毎日同じ作業が好きな子もいます。その時の状況に気を配りながらですが、いろんな作業があることがメンバーさんにプラスだと考えています。


(職員の山田さん(写真左)から、何をしているのかな?と興味を持って料理を覚える)

「シェフ」と慕われる山田さんの指導のもと、お菓子の作り方を覚えていきます。カフェモカやチーズボウルなど、新らしい味や商品にもチャレンジ。イベント限定のオレンジのパウンドケーキは山田さんが試作して商品化。オレンジピールを煮るところから作っています。

***


野川さん:みなさん、テキパキとお菓子作りをなさっていますが、私なんてレシピ本をみながらでも失敗することがあります。すぐに覚えられるものなのですか?

お菓子作りは自分(職員)だけでやるわけではないので、ここに来ているメンバーさんにはどういう教え方をすればいいのか考えていかなければいけないことが苦労するところ。できることの説明はすごく難しいんです。お菓子作りの工程ごとにどのように伝えるか、どのように伝えるのが伝わるのか、言葉がいいのか、やってみせるのがいいのか、やりながら言葉で説明がいいのか絶えず考えなければいけない。ここに来ているメンバーさんは、その時できたからといって、(その日の調子などによって)ずっとできていくわけではない、職員はそこを意識していないと。任せきりにすると、これはこうだったよねと量を違って作ってしまうこともあったりとするので、気は抜けないですね。

メンバーさんによっては、言葉がよくわかる方ほど、教えたことをこのように受け取ってしまうのかと難しいこともあります。職員は多くの言葉をもっていないといけない、表現の仕方や、やり方、性格にも考慮しなくてはいけない。(職員も)反省会や振り返りが大切です。

<できていくところを見るのはうれしい>

成長は目でみずらいもので、気が付いたらこのことを言わなくなっていたね、というように後から気がつきます。例えばトイレに行く時にはスリッパを履きかえてね、トイレに行く時にはスリッパを履きかえてね、と何度も言っていたことが、気が付いたら「あれ、この子にはいつのまにか言わなくなっていた」成長ってそういうことだね、と。その時にはみんなで「やったね」と喜ぶかたちになります。

 


<その日のぴいすさんにて>


お菓子作りは、身支度・手洗いから。
自宅で作るのなら、エプロン一つサッと身につけ手を洗って早速お菓子作りですが、
商品として出すからには、身支度もしっかりと。
作業着をはおる前には、粘着テープを使ってホコリなどしっかりと取ります。

使う道具もきれいにしてから。

料理器具を洗ったり、使ったものを仕舞うことだってお菓子作り。

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黙々と作業。
メンバーみんなで分担しながらのお菓子作りは、一つのチーム。

お菓子作りが終われば、いつもの友達。

さてさて、今日のおやつはー、もちろん今日は「ぴいすティック」をいただきます。
ふわっとサクッと、ふふふ。

(取材:野川さん 撮影:赤石雅紀)

2018-01-05 | Posted in 暮らしメモNo Comments » 

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